Web制作において、ユーザーにわかりやすくするために視覚的な要素の写真、画像、イラストを使用します。自社で撮影した写真やオリジナルの画像・イラストであれば問題はありませんが、素材を使用する際には著作権侵害に十分注意する必要があります。さらに、最近ではAI生成技術が普及しており、AI生成画像に関する著作権問題も注意が必要となります。
本記事では、Web制作時に画像素材やAI生成画像を使用する際の著作権について、押さえておくべき注意点をご紹介します。著作権トラブルを避けるために、画像素材やAI生成画像の適切な使用方法を理解しましょう。
CONTENTS
著作権とは

著作権とは、創作物の作者や権利者がその創作物を独占的に利用できる権利のことを指します。著作権は、文学、音楽、絵画、写真、映画、プログラムなど、さまざまな形態の創作物に適用され、著作権を持つことで創作者は次のような権利を持つことができます。
著作権の種類
- 複製権:
創作物を複製する権利 - 公衆送信権:
インターネットなどを通じて創作物を送信する権利 - 翻訳権・翻案権:
創作物を翻訳したり、改変したりする権利 - 頒布権(はんぷけん):
映画の著作物特有の権利
元は劇場用映画フィルムの配給を著作権者(映画製作者)がコントロールするためのもの - 貸与権(たいよけん):
創作物を貸し出す(レンタル)権利
(4)頒布権には譲渡権と貸与権が含まれていますが、映画の著作物以外の著作物ついては譲渡権と貸与権が別々に存在しています - 展示権:
創作物を展示する権利
「美術の著作物の原作品」と「未発行の写真の著作物の原作品」の みを対象として付与
これらを公衆向けに「展示」することに関する権利
著作権が発生するタイミングと期間
著作権は創作物が創作された時点で自動的に発生し、登録などの手続きは必要ありません。日本では、著作権の保護期間は原則として作者の死後70年間と定められています。この期間が過ぎると、著作物はパブリックドメインとなり誰でも自由に利用することができます。
著作権を侵害する行為には、無断でコピーすること、無断でインターネットにアップロードすること、無断で改変することなどが含まれます。これらの行為は法的な罰則を受ける可能性があるため、著作物を利用する際には著作権に十分注意することが重要です。
Web制作時に画像素材を使用する際の注意点

インターネット上で公開されている写真や画像、イラストなどの素材には、無料で商用利用が可能なものから、私的利用は無料でも商用利用には料金が必要なものまで、さまざまな種類があります。素材が配布されているからといって安心して使用するのではなく、必ず利用規約を確認し、著作権違反を防ぐために正しく使用しましょう。
Webサイト制作時に素材を購入する際は、そのライセンスにも注意が必要です。
たとえば、社員の一人が個人的に登録している有料素材サイトがあり、その社員が個人のアカウントを用いて購入した素材は、あくまでその従業員個人に対して使用許諾されているため、会社の他の従業員がその素材を使用するとライセンス違反になります。さらに、素材提供者から著作権違反を主張された場合、素材を購入した従業員が退職しているとライセンス取得を証明することが困難になります。ビジネスとして素材を購入する場合は、必ず法人として登録しているアカウントで購入し、著作権侵害のリスクを避けましょう。
著作権の観点から、素材の正しい使用方法を理解し、安心してWeb制作を進めるためのポイントを押さえておくことが重要です。
Web制作時の素材購入パターン
Web制作での素材購入パターンにも種類があります。
◾️パターン1:Web制作会社が購入してWebサイト制作
最も多いパターンで、素材を購入したWeb制作会社がライセンス当事者となります。

◾️パターン2:クライアントがアカウントを作って素材購入し、Web制作会社へ共有
制作期間に余裕があり、クライアントで素材を購入&支給ができる場合は問題ないですが、制作期間が短い案件では、スケジュール的に難しい場合もあります。

◾️パターン3:Web制作会社が購入した素材をクライアントが別の制作物にも流用したい
Webサイト以外、別の制作物への使用を希望される場合「画像選定費用」や、「著作権譲度費用」が別途で発生します。また、素材購入先が限られたり、条件が発生するため希望する場合は制作着手前にあらかじめ伝える必要があります。

ライセンスを受ける当事者を変更する方法
ストックフォトサービスによっては、ライセンスを受ける当事者を購入者以外に設定することも可能です。Web制作会社が代理で購入した素材をクライアントが自由に使えるようにする場合にはこの設定が必要になります。
注意点として、代理で購入した会社にもクラアントと連帯して義務や責任が発生することがあります。また、ライセンス当事者をクライアントに設定した場合、複数のプロジェクトで利用できるのは、クライアントのみになり、代理で購入した会社はその後は使えなくなります。
詳しくは、各ストックフォトサービスの規約をご確認ください。
代理として購入される方は、「ライセンシー」(雇用主又はクライアント)が本契約において負う義務及び責任の全てを「ライセンシー」と連帯して保証するものとします。購入された権利は、購入時に「ライセンシー」として指定された者のみに帰属します。購入された権利は、購入時に「ライセンシー」として指定された者のみに帰属します(お客様またはお客様の雇用主/クライアントのみになります)。つまり、お客様がロイヤリティフリーのイメージを購入した場合、お客様か雇用主/クライアントのどちらかのみ(両者ではありません)がそのイメージを複数のプロジェクトで利用できます。
引用元「ゲッティイメージズのコンテンツライセンス契約」
https://www.gettyimages.co.jp/eula
AI生成画像を使用する時の注意点
近年では、Chat GPTなどの生成AI技術の進化により、文章だけでなく画像もAIで生成できるようになりました。インターネット上では、誰でも簡単に画像を生成できるツールが多数公開されており、AI生成画像は私たちの日常生活に身近な存在となっています。こうしたAI画像生成ツールは、手軽に利用できる点からビジネスシーンでも活用する人が増えています。
しかし、AIが画像を生成する際にインターネット上の著作物を無断で使用している場合、生成されたAI画像が著作権侵害となるリスクがあります。AI生成画像の歴史は浅く、権利関係や法整備が十分に整っていないため、著作権侵害を避けるためには、信頼できるAI画像生成ツールを使用することが重要です。また、生成した画像をWebサイトで使用する際には、商用利用が許可されているかどうかを必ず確認しましょう。

著作権○×クイズ 全5問
第1問:高級外車が写り込んでいる写真をWebサイトに掲載してもいい?
正解:〇
写真の一部に背景として写り込んでいるだけならWebサイトに掲載しても問題ありません。
衣料品‧靴‧バッグなどの有名ブランド製品や自動車などの実用品に施されるデザインの多くは、著作権法で保護される著作物ではなく、意匠法で保護されるため、広告写真の背景として使用する場合は問題がないと考えられます。
第2問:一般人が写っている写真をWebサイトに掲載してもいい?
正解:×
一般人でも著名人でも、人物が特定できる肖像は、本人の許諾を得なければ使用できません。
※ただし、報道目的の写真や、公園‧街路など公の場所で不特定多数の撮影が予測される場合は、肖像権を主張できない場合もあります。
第3問:屋外に設置された看板が写り込んだ景観写真や建築物の外観を含む街の風景写真をWebサイトに掲載してもいい?
正解:〇
Webサイトに掲載しても問題ありません。
屋外の場所に恒常的に設置されている「美術の著作物でその原作品」または「建築の著作物」は、複製して屋外に恒常的に設置することや、著作物として複製‧販売する場合を除き、自由に利用することができます。
(ただし、ディズニーランドなどはシルエットであってもNGのため注意。また、東京タワーは許諾が必要であったりするため下調べは必ず行いましょう)
第4問:他社のWebサイトのレイアウトを真似してもいい?
正解:〇
レイアウト自体はアイデアであり、著作権法の保護対象ではないため、真似して使用しても問題ありません。
レイアウトと色は、創作を表現するための手段という位置付けです。音楽を作るときにギターの音色そのものは「著作
物」とは言いづらいのと同じ扱いです。
※しかし、どのWebサイトか一見して判別できる周知なレイアウトの模倣の場合、知的財産権侵害を主張される可能性があります。
第5問:「私的使用のための複製」であれば、著作権者の許諾を得ることなく行うことができると定められていますが、社内向けプレゼン資料に著作物である図表‧写真を貼ることは「私的使用」にあたる?
正解:×
プレゼン資料の中で、著作物を勝手に複製して使用することは、原則として、著作権者の「複製権」(著作権法21条)を侵害する違法行為です。
「私的使用」は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」と定義されており、会社の同僚と共有する目的で作成されるプレゼン資料での使用は、私的使用の範囲外となります。
まとめ
- Web制作では、写真や画像、イラストの使用が不可欠ですが素材使用にあたって著作権の注意が必要です。
- 著作権は、創作物の作者がその利用を独占する権利で、複製、公衆送信、翻訳などが含まれます。
- 素材画像の利用時には、商用利用が可能か、利用規約を必ず確認しましょう。
- AI生成画像には著作権問題があり、信頼できるツールを使い、商用利用可能か確認することが重要です。
- ビジネス利用では、個人ライセンスではなく、法人ライセンスで素材を購入して著作権リスクを回避しましょう。
- 素材購入は、Web制作会社が購入する、クライアントが購入するなどの方法があり、適切に選びましょう。
参考文献
1 : 赤田繁夫/上野善弘(2010).「デザイナーのための著作権ガイド」.パイ インターナショナル
2 : 文化庁 「いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/utsurikomi.html
3 : プレゼン資料に他人が作成した図表や写真を貼ったら著作権侵害になる?|@DIME アットダイム
https://dime.jp/genre/1264263/
4 : 広報PR担当者が知っておきたい写真の権利「著作権」「肖像権」「クレジット(コピーライ ト)」に関する 基礎知識|PR TIMES MAGAZINE
https://prtimes.jp/magazine/copyright-portrait-right/
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